広島風お好み焼きが嫌いだった男がその専門店を開いた理由

広島お好み焼きを焼く、弘々家店長市山隆志

「お好み焼きって、あまり好きじゃなかったんですよ」

初めてこの言葉を聞いたとき、思わず二度見してしまいました。鉄板の前に35年以上立ち続け、食べログお好み焼き百名店に4年連続選出され、グランドキュージーヌ広島お好み焼き部門の金賞まで受賞した人物が、その口から出た言葉とは思えなくて。

山口県下関市・山の田エリアで創業32年を迎える「広島お好み焼き 弘々家」。店主・市山隆志の歩みは、「嫌い」から「惚れ込む」への大転換の物語です。そしてその転換の中に、弘々家のパリパリ麺が生まれた秘密も隠されています。

下関で生まれ育ち、還暦を超えてもスノーボードを楽しみ、フルマラソンを10回以上完走し、ツールド下関にも出場する市山さん。そんな「動くことをやめない男」が、なぜ鉄板の前に立ち続けるのか。今日はその理由を、じっくりお伝えします。

こんな方におすすめ

  • ✅ 弘々家のパリパリ麺がどうやって生まれたか気になっている方
  • ✅ 広島風お好み焼きをまだ食べたことがなく、食べる前に物語を知りたい方
  • ✅ 「本物の味」を作り続けてきた職人の哲学に触れてみたい方
  • ✅ 下関・山の田エリアで長く愛されてきたお店の背景を知りたい方
  • ✅ 食べログ百名店ってどんなお店なの?と興味を持っている方
目次

「好きじゃなかった」からこそ、徹底的に向き合った

市山さんが最初に広島風お好み焼きと出会ったのは、若い頃のこと。当時の印象は「もちゃっとした麺と、重ったるいソース」。正直、ピンと来なかったと言います。

ところがある日、一枚のお好み焼きに出会って考えが変わります。麺が、違った。外はパリッと、中はふんわり。キャベツの甘みと肉の旨みが層になっていて、食べ進むたびに香ばしさが追いかけてくる。「なんだこれは」と思った瞬間、市山さんの中で何かが動き出しました。

「嫌いだったのは、広島風お好み焼きそのものじゃなかったんです。ちゃんと焼けていない一枚を食べてただけだった」

その気づきが、すべての始まりでした。好きじゃなかったからこそ、「本当においしい一枚はどういうものか」を誰よりも真剣に問い続けることができた。愛しているから盲目になるのではなく、疑うところから始めた。それが市山さん流の向き合い方です。

7,000回の試行錯誤と、瓦そばからのヒント

弘々家のパリパリ麺は、生めんを鉄板でじっくりきつね色に揚げ焼きした独自の仕上がりが特徴です。外はパリパリ、中はふんわり。この食感を完成させるまでに、市山さんは7,000回を超える試行錯誤を重ねました。

ヒントをくれたのは、下関の郷土料理「瓦そば」でした。茶そばを熱い瓦の上で焼き上げるあの料理を見て、「麺は焼き方次第でこんなに変わる」という確信が生まれた。広島風の層を崩さず、麺だけをきつね色に仕上げる技術は、一枚一枚の鉄板の温度管理と向き合い続けた末に辿り着いたものです。

「ちゃんと焼けた一枚を出す」。その一点にこだわる姿勢は、今も変わりません。どんなに混んでいる日も、全てのお好み焼きを市山さんが一枚ずつ手焼きで仕上げています。厨房の機械化は一切なし。35年以上、毎日鉄板の前に立ち続けてきた体が、温度と音と香りで「今だ」という瞬間を知っています。

✓ ここまでのポイント

  • 市山さんは広島風お好み焼きが「好きじゃなかった」経験があるからこそ、本物の一枚を追い求めることができた
  • パリパリ麺は7,000回の試行錯誤と下関の「瓦そば」からのヒントで生まれた、弘々家だけの技術
  • 全てのお好み焼きを店主が一枚ずつ手焼きで仕上げる姿勢は、創業から32年間変わっていない

休みの日も「おいしいを探す旅」を続けている

市山さんの一週間は、鉄板の前にいない時間も「仕込み」で埋まっています。休日には下関市内はもちろん、国内外のさまざまな料理を食べ歩き、「おいしい一枚を焼くためのヒント」を探し続けています。

スノーボード、フルマラソン、自転車レース。体を動かすことをやめない市山さんが言います。「体が鈍ったら感覚も鈍る。舌も手も、使い続けなきゃ分からないことがある」。

その旅で出会ったのが、豚キムチに使われる「黄家」のキムチです。市内の焼肉店も仕入れに来る韓国食材専門店の本格キムチを、弘々家の鉄板で仕上げる。さらに「大津屋醤油×弘々家ソース」という偶然から生まれたハイブリッドソースが加わって、ハイボールが止まらなくなると評判の一品が完成しました。

山梨・神奈川の鉄板焼き職人から伝授された秘伝レシピで作るだし掛け出汁巻き玉子も、食べ歩きと人との出会いがなければ生まれなかった一皿。注文を受けてから3個の卵を素早く焼き上げ、熱々のカツオ出汁をジュワッとかけて提供するパフォーマンスは、グランドキュージーヌ金賞を受賞した弘々家の看板メニューになっています。

「麺がこんなにおいしいなんて!」

40代・男性

「ここに来ると元気が出るんです!」

10代・女性(学生)

「地元に育てていただいた」という感謝が、今日の一枚を焼かせる

創業32年。累計50万人以上のお客様が弘々家の鉄板の前に座ってきました。学生から高齢者まで、ファミリーから一人飲みのサラリーマンまで。山の田エリアで長年暮らしてきた地元の方々が、弘々家を育ててくれました。

「また来るね!」の声は、32年分積み重なっています。市山さんが「忙しいから少し手を抜こう」と思ったことが一度もないのは、その声が耳の奥に残っているから。一枚一枚に「また来てもらえるか」が問われている、という感覚が今も続いています。

食べログお好み焼き百名店への4年連続選出(2022・2023・2024・2025)は、全国のグルメファンから評価された証です。TYSテレビやKRY山口放送、ヤフーニュースへの掲載も、地道に一枚一枚を焼き続けてきた結果として後からついてきたもの。「評価されるために焼いたわけじゃない」という市山さんの言葉が、弘々家の強さを表しています。

北九州から関門橋を渡って来るお客様、角島観光の帰り道に立ち寄るお客様、インスタグラムで「ジュワッ!」という出汁かけの動画を見てすぐ来たという若いお客様。遠くから来てくれる方が増えても、市山さんの鉄板の前での姿勢は変わりません。カウンター6席では、その手元を間近で見ることができます。

「嫌い」から始まった物語の続きを、ぜひ食べに来てください

広島風お好み焼きが嫌いだった男が、その専門店を開いた理由。それは「本当においしい一枚」を自分の手で焼いてみたかったから、そして「本当においしい一枚」を誰かに届けたかったから、というシンプルな答えに行き着きます。

嫌いだったからこそ妥協できなかった。好きじゃなかったからこそ、7,000回試せた。その積み重ねが、弘々家のパリパリ麺になり、だし掛け出汁巻き玉子になり、32年間続く「また来るね!」の声になっています。

初めて来られる方は、まず「贅沢6種盛り」を選んでみてください。殻付き海老・安岡ねぎ・チーズ・イカ天・もち・イカが一枚に重なった、弘々家の魅力が凝縮された一皿です。カウンター席なら、市山さんがきつね色に焼き上げる麺の香ばしい香りと、「ジュワッ!パリッ!」という音も一緒に楽しめます。

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弘々家は月曜定休(月曜祝日の場合は翌火曜定休)、火〜日・祝日はランチ(11:30〜15:30)・ディナー(17:30〜23:00)ともに営業しています。月に数日の臨時休業はインスタグラムとLINEでお知らせしています。駐車場は店舗前2台・山の田バス停裏手6台の計8台、無料でご利用いただけます。

山の田バス停から徒歩30秒。その先に、35年間止まらなかった鉄板があります。

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