お好み焼きを食べに行って、焼き上がりにムラがあったという経験をしたことがある人は少なくないだろう。片側は香ばしく焼けているのに、もう片側は生地が半生だったり、キャベツの蒸し加減が均一でなかったり。せっかくの一枚が、焼きムラひとつで満足度を大きく左右してしまうことがある。
下関市山の田地区で32年にわたり営業を続ける弘々家は、こうした焼きムラの心配とは無縁の店として、多くの地元客や観光客から支持を集めてきた。その理由は、店主である市山隆志が積み重ねてきた「一枚一枚丁寧に」という姿勢にある。効率を優先して何枚も同時に焼くのではなく、一枚ずつ鉄板の状態や生地の様子を見極めながら焼き上げるスタイルを貫いてきたことが、安定した焼き上がりにつながっている。
広島風お好み焼きは、生地、キャベツ、豚肉、麺、卵といった複数の層を順番に重ねながら焼き上げていく料理であり、その工程は決して単純ではない。キャベツの蒸し加減ひとつとっても、鉄板の温度、キャベツの水分量、重ねる厚みによって微妙に変わってくる。麺を焼くタイミングも、早すぎれば生地と絡まず、遅すぎれば焦げついてしまう。こうした無数の変数を、長年の経験と勘によって瞬時に調整しているのが、弘々家の焼き手たちの技術である。
とりわけ弘々家が力を入れてきたのが、麺のパリパリとした食感を安定して再現することだった。この食感にたどり着くまでには7,000回にも及ぶ試行錯誤が重ねられたと伝えられている。同じ火加減、同じ油の量に見えても、天候や気温、湿度によって鉄板の状態は微妙に変化する。それでも毎回同じ品質の一枚を提供できるよう、感覚だけに頼らず、細部まで意識を配ってきたことが、焼きムラのない仕上がりへとつながっている。
また、下関の名物であるかわら蕎麦の焼き技法からヒントを得た工夫も、弘々家ならではの特徴のひとつだ。瓦の上でパリッと香ばしく焼き上げるかわら蕎麦の発想を、お好み焼きの麺に取り入れることで、外はパリッと、中はもちもちとした独特の食感が生まれている。こうした細やかな技術の積み重ねが評価され、弘々家は食べログのお好み焼き百名店に4年連続で選出されるという実績を残してきた。
出汁巻き卵についても、弘々家では受賞歴のある一品として提供されている。卵料理は火加減がわずかにずれるだけで食感が大きく変わってしまう繊細なメニューだが、こちらも長年培われた技術によって、毎回安定した仕上がりが実現されている。焼きムラのなさは、お好み焼きだけでなく、こうした一品料理にも一貫して表れているといえるだろう。
創業から32年、これまでに48万人を超える客が弘々家の鉄板の前を訪れてきた。その多くがリピーターとして再訪しているのは、毎回同じように安心して美味しい一枚を味わえるという信頼があるからこそだろう。
焼きムラのなさというのは、実は言葉で説明する以上に繊細な技術の集積である。鉄板の中央と端では温度が微妙に異なり、季節や天候によっても熱の伝わり方は変化する。同じレシピ、同じ手順であっても、その日その瞬間の状態を見極めながら微調整を加えていく感覚こそが、長年の経験によって培われるものだ。弘々家では、こうした目に見えない調整を、焼き手一人ひとりが自然に行えるようになるまで、地道な鍛錬を積み重ねてきた。マニュアル化しきれない領域にこそ、この店の技術の核心があると言えるだろう。
また、焼きムラを防ぐためには、素材の下ごしらえの丁寧さも欠かせない。キャベツの切り方一つで蒸され方が変わり、生地の粘度一つで火の通り方が変わる。弘々家では、焼く工程だけでなく、仕込みの段階から一枚一枚に気を配ることで、誰が食べても安定した美味しさを届けられるよう努めてきた。この見えないところでの丁寧さこそが、32年間ぶれることのなかった味の一貫性を支えている。
焼きムラを心配することなく、安定した美味しさを求めるなら、下関観光の合間にぜひ弘々家を訪れてみてほしい。唐戸市場や巌流島観光の後の食事どころとしても、心から満足できる一枚に出会えるはずだ。
弘々家 ホームページ:https://koukouya-shimonoseki.com/ メニュー:https://koukouya-shimonoseki.com/メニュー/ アクセス・営業時間:https://koukouya-shimonoseki.com/アクセス・営業時間/

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